何に悩んでカウンセリングを訪れる?

人は絶えず何かに悩み、何かに苛まれ、何かに困りながら生きています。
生活が順調で普段はあまり悩んでいないように思える方も、
5年後10年後の自分を思い巡らせるとどうでしょうか?
悩むことや困ることは悪いことばかりではありません。
人を成長させるためのきっかけを作ってくれてもいるでしょう。

当院の心理相談室は精神科/心療内科クリニックに併設しています。
そのため当相談室のカウンセリングを希望される方の多くが、精神医学的な病気や障害に悩まれています。
初めはやはり、その病気や障害、症状をなんとかしたいという思いからカウンセリングをご希望されることが多いように思います。
しかし、カウンセリングの回数を重ねるうちに、それだけではない悩みが浮かび上がってきます。

「なぜだかいつも同じように人間関係が苦しくなる」
「今まで必死に生きてきたけど、自分というものがよく分からない」
「本当は自信がないけど、その弱さを認められない」 etc

私たちは絶えず誰かと関わりながら生きています。
誰とも関わらずに日々を過ごそうとしている方も、心のなかで「誰とも関わりたくない」と思ったとき、
既にそこに心を脅かす誰かが居座っていることに気がつきます。
私たちが社会のなかにいる限り、人間関係は切っても切り離せないものとして立ち現れるようです。
その人間関係はこころを安心させる“つながり”をもたらすこともあれば、
こころを脅かす“破局”をもたらすこともあります。

だからこそ私たちは、社会のなかでその多くの時間を、
『本当の自己』を覆い隠して『偽りの自己』として生きていくこととなります。
『偽りの自己』(精神分析家ウィニコットの言葉)は決して悪いものではなく、
社会に見せている自己の姿です。
しかしその部分が大きくなりすぎるあまり、『本当の自己』をどこかに失ってしまうことが起こります。
社会とつながろうとするあまり、その当人自身が『本当の自己』とのつながりを失ってしまうのです。

カウンセリングは、そんな『本当の自己』とのつながりを少しずつ回復していく時間でもあります。

                                        臨床心理士 諏訪

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